こんにちは、芸艸堂(うんそうどう)です。
芸艸堂には江戸末期~明治初期に制作されたと思われる葛飾北斎、円山応挙、長沢芦雪や伊藤若冲
などの版木が現存しています。
当時の印刷技術は木版摺りが主流であり、多くの画家の画帖本が出版されていました。
明治になり徐々に機械印刷が普及しはじめ、木版印刷から機械印刷に移行する出版社から、
芸艸堂は創業時より版木を求版してまいりました。
その数は数万枚にのぼり、正確な数はわかりません。
桜材に彫られた版木は芸艸堂に伝わって120年経過していますが、現在も再摺りが可能であり
現在の摺師さん達によって再版し続けています。
その中の1つ、長沢芦雪の藤花群雀図を紹介します。
長沢芦雪(ながさわ ろせつ) 宝暦4年(1754年) - 寛政11年(1799年)
「京都画壇のルネサンス」ともいえる気風を代表する江戸時代後期の絵師。
江戸中期の代表的絵師・円山応挙に学び、奇抜で機知に富んだ表現を展開した画家。
版木の数は8枚、内、6版の両面に彫刻がほどこされているので版の数は14版になります。
輪郭となる「骨」といわれる、基本となる版木。輪郭の幅は1ミリ程。
凸に彫り上げられています。
「骨」板を基本に彫られた色板。全ての板が「骨」の輪郭とずれない様に彫られています。
裏面に彫られた別の図柄の彫刻。
絵柄ごとに版木はひと括りして保管しているのですが、
桜の木は当時も貴重であり、無駄なく彫刻されていました。
この図を摺る場合、この1版が芦雪の版木に彫られているので、探す羽目になります。
(古版木から再摺りする場合、芸艸堂では頻繁に起こる現象)
上記の版木の摺り上がった部分です。
時代とともに歪んだり反り返った版木を摺師さんが一枚づつ調節し
100年以上再摺りしていなかった版木から色ずれなく摺り上げて頂きました。
調節した版木は「絵具が和紙にきれいに載って行きました。」と摺師さんが
言われていました。
当時の彫りの技術の高さが伺える、実際に手にとって使う職人さんでしかわからない
版木の話も知ることができました。
今日ご紹介した 長沢芦雪さんの展覧会が開催されています。
MIHO MUSEUM にて
2011年春季特別展「長沢芦雪 奇は新なり」
3月12日(土)〜6月5日(日)が開催中です。
同展では、重要文化財「虎図襖(とらずふすま)」や「白象黒牛図屏風(はくぞうこくぎゅうずびょうぶ)」
などの代表作をはじめ、82年間行方不明だった「方寸五百羅漢図(ほうすんごひゃくらかんず)」を含めた
新出作品40点以上が展示されています(会期中展示替えあり)。