こんにちは、芸艸堂(うんそうどう)です。
以前ご紹介した長澤芦雪の木版画に続き、
芸艸堂に伝わる伝承板木より再摺りした木版画をご紹介します。
上村松園【松園美人画譜】
弊社が明治42年に発行した全12図の多色木版摺 画帖本です。
上村 松園(1875〜1945)
京都市に生まれる。京都府画学校に学び、鈴木松年、幸野楳嶺に師事し、
のち竹内栖鳳につく。昭和16年帝国芸術院会員、帝室技術員、23年文化勲章を受章。
代表作に「序の舞」がある。
↑こちら、弊社資料室。創業来より出版した版本が積まれています。
(和綴じ本なので背表紙にタイトルがありません。保管方法としては
タイトルを書いた別紙を挟んで平積みする方法で管理しています。
因みに弊社の生き字引、芸艸堂勤続50ぅん年の番頭氏は背表紙を
見ただけで、タイトルが解ります。綴紐の色、表紙の色で大体解るそうです。)
その中の1冊に上村松園さんの木版摺り作品集「松園美人画譜」があります。
(写真は大正2年発行)
現在では、本という形で再版する事は、コスト、需要の面から難しく、
観賞用の一枚摺りとして3点摺り上げる事になりました。
↓その板木がこちら
版木の枚数は13枚 桜板の両面に彫刻が施されているので
版数は26版になります。
版木は強度があり伸び縮みが少ない桜材を用いているため百年前に彫られた版木でも再摺り
する事が可能でしたが、傷んでいる版が多く、彫師が修復、補刻をしながらの再摺りです。
人間国宝 岩野市兵衛が漉いた和紙を用い、現在の摺師、堀居氏に再版していただきました。
↓細かい着物柄やお顔の部分の色がづれないように繊細な摺りを経て再版できた版画がこちらです。
江戸美人 (摺師:堀居)
元禄美人 (摺師:竹中)
衣通姫(そとおりひめ) (摺師:佐治)
全12図の中から、3点を再版しましたが、同じ作品集でも図柄が違うと板木の数も
増減します。上記の衣通姫の板木は江戸美人の板木に比べ倍近くの版数です。
それぞれ担当された摺師さんの負担は大変でしたが、初版と変わらないくらい美しく
再摺していただきました。
松園さんの初期の作品でもあり、木版作品集として描かれた非常に珍しい美人画です。