こんにちは、芸艸堂(うんそうどう)です。

2011年4月25日よりNHK BSプレミアム スペシャル番組「若冲ミラクルワールド」
が4夜連続で放送されます。

人気グループ嵐の大野智さんがナビゲーターをされるとあって、多くのメディア、ブログに
紹介記事が載っていますが、芸艸堂からもご紹介。

NHKが有するスーパーハイビジョンなど最先端の機器を使い、若冲が残した傑作の数々を詳細に分析し、
驚異のテクニックの秘密を科学的に明らかにしていくそうです。

4夜にわたって若冲の魅力の全貌を明らかにする内容は
4月25日(月) 午後9:00~10:30 色と光の魔術師~“奇跡の黄金”の秘密に迫る~
4月26日(火) 午後9:00~10:30 カタチに命を吹き込む~細密表現と視覚のトリック~ 
4月27日(水) 午後9:00~10:30 “国際人”JAKUCHU~千年先を見つめた絵師~
4月28日(木) 午後8:00~9:30  黒の革命~水墨画の挑戦者~

28日放送の「黒の革命」では、若冲が黒の世界へのこだわりから手がけた技法の1つ、
拓版画が紹介されます。


拓版とは、絵具を置いた版木に紙を載せ、摺り込むのではなく、タンポで叩くようにして
紙に墨を載せ画を浮き上がらせる。白と黒のメリハリのはっきりした画面
に強い凸凹がつき、他の版画にはない立体感を感じさせます。
若冲は、この拓版技法で摺った版本を数点遺しています。
その中の1つ「玄圃瑤華(ゲンポヨウカ)」は、若冲53歳の時の作品で、極端に折り曲げられ、
デフォルメされた草花に虫類を配した構図は、肉筆作品に見られる若冲絵画のエッセンス
が凝縮された作品です。

今回、芸艸堂が明治40年頃に刊行した「玄圃瑤華(ゲンポヨウカ)」の元版木を用い、
現代の摺師が絶えていた拓版摺りの技法を工夫を重ね再現した様子が紹介されます。


a8c8d3e2.jpg
ハイビジョンを使った撮影風景

コピー ~ 玄3-A ヒツジクサ

↑明治40年頃に刊行した若冲画帖「玄圃瑤華(ゲンポヨウカ)」の元版木。6柄が横一列に彫られています。

■明和5年(1768年)に若冲自身によって作られた拓版画「玄圃瑤華(ゲンポヨウカ)」と「素絢帖(ソケンチョウ」)
 を芸艸堂は上下2冊本として編集。同じ技法で「若冲画帖」として出版しました。

04400b7f.jpgea6dbf04.jpg


画面左が明治刊行版 右が昭和刊行版(芸艸堂発行)(↑明治版は深い黒で摺り上げられていますが昭和版は薄い)

芸艸堂の「玄圃瑤華(ゲンポヨウカ)」は明治~昭和にかけて発行していましたが、写真のように、墨が昭和版では
薄くなっています。当時から深い黒を表現する事は難しく発行部数は限られた希少本でした。

当時の「黒」を再現するため、何度も摺り直しを重ねた摺師さんの様子が紹介されます。

083d802d.jpgcf8d9c97.jpg

麩糊を溶いた水を版木に引き、紙を載せ刷毛でならす。版木と紙の間の気泡を紙が破れないようにしながらブラシで叩いて
気泡を抜きます。濡れた紙が版木に固く密着したら、一日そのままの状態にします。

f9bd0518.jpg92d5fc38.jpg

墨を含ませたタンポを使い、紙が破れないように注意しながら叩きます。紙の水分が多すぎると墨が滲み拡散して
しまうので、生乾きになったところで、何度も上から叩いて完成します。
一枚摺り上がるのに、最短で2日かかります。

そして摺り上がった作品の1つがこちら
1fea0745.jpg


dfd563fc.jpg
 ←凹凸がつき立体感のある表面。

一見すると墨1色の単純な工程で出来上がりそうな拓版摺りですが、1ヶ月に数十枚しか完成できませんでした。
今回の再版工程を経て若冲の「黒の世界」へ少しでも近づけたのでしょうか?
本編をぜひ、ご覧になってください。