こんにちは、芸艸堂(うんそうどう)です。

今夏、好評を博した>「冷たい炎の画家 ヴァロットン展」 三菱一号館美術館
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独特の視点と多様な表現を持つヴァロットンの作品は、100年以上たった今でも斬新で現代的です。
木版作品も多数制作され、三菱一号館美術館では187点の木版作品が所蔵されています。
今回その所蔵品から1点、木版画にて復刻する依頼を頂戴しました。

その作品はこちら
ヴァロットン校了

墨1色の版画なので最初はさほど難しい仕事ではないと思っていました。浮世絵ならまっすぐな線で彫り上げるのですが、
原画の趣を再現するため、ヴァロットンが思いのままに彫刻刀を走らせた線の微妙な強弱やゆがみを彫師が忠実に再現
し、予想以上に難しい彫となりました。

彫工房①

原画データーを基に復刻サイズを和紙に印刷し、桜の一枚板に貼り付けます。

彫道具

大小さまざまな彫刻刀を使い彫分けます。

彫②

水を満たしたフラスコ越の光線で墨線を彫っていきます。

彫①

彫師の北村さん
 
原画は洋紙に水生インクで摺られています。
復刻にあたり墨の付が良い和紙とインクの付きが良い和紙と材質が違うので、2種類の和紙で校正摺りをしました。

ヴァロットン初校

(インクに適応した和紙に墨をのせるとゴマ摺になってしまいます。)
今回の復刻は、もしヴァロットンが日本で木版技術を目の当たりにしていたら、墨を使い、和紙に摺っていたのでは?
という企画のもと、ヴァロットンの黒は墨で表現する事に決まり、越前和紙(人間国宝9代岩野市兵衛漉元)を使用する
ことになりました。 版画用顔料や墨の付が良く、塵が少ない木版摺りに適した和紙なのです。

摺り全身カット

摺師の中山さん

刷毛で墨を板にのばす①

墨を版木に付け、刷毛で均等にのばしていきます。刷毛の毛先はつぶして枝毛状になっています。
これにより絵具に気泡が残らず版木にのばすことが出来ます。

摺り①


色の付き具合をチェック

色の付き具合をチェック。墨を一度に版木に載せると凹面に絵の具が入り細い線表現がつぶれてしまいます。墨の量が少ないと色にむらが出てしまいます。

ヴァロットン再校

校正摺りの段階でどうしても線が絵の具でつぶれてしまう箇所は、再度 彫師が補刻します。

摺り②

再校正摺

ヴァロットン補刻後 校了

補刻後、初校でつぶれていた線がはっきりと表現されるようになりました。

完成

墨を3回付け摺り重ねる事により線描が潰れず深味のある墨が表現されました。

ヴァロットン校了

完成!復刻木版画は三菱一号館美術館 STORE1894 のみ販売されています。