芸艸堂 店主の日記

明治24年京都にて創業、 現在日本で唯一の 手摺木版和装本の 出版社「芸艸堂(うんそうどう)」の 4代目当主が芸艸堂の木版にまつわる話、 旬の情報をお届けします。

製作工程・職人さん

明治24(1891)年、美術書出版社として京都で創業。
現在、日本唯一の手摺木版本を刊行する出版社です。
その木版摺、製本技術を活用して、明治~昭和初期にかけて刊行した多色摺り図案集のモチーフを
アレンジし、顔料を使った美しい発色、柔らかな和紙の手触りが特徴の木版商品や、文具、インテリア
などを制作しています。

和紙の里 越前へ

こんにちは。芸艸堂です。

福井県越前市の漉元に見学に行ってきました。
木版摺に適した塵が少なく薄くて強度のある和紙を漉いている産地です。
芸艸堂は創業時からこちらの越前奉書紙を使って木版摺をしています。

「日本一複雑な屋根」を持ち、紙祖神「川上御前」を祀る岡太神社・大瀧神社へ
お参り。
岡太神社
岡太神社②
残念ながら工事中で全容を観ることができませんでした。
岡太神社③
岡太神社④
岡太神社⑤

神社の麓に手漉き和紙の工房が集まっています。

原材料となる楮(こうぞ)の繊維から塵を抜き出します。
全て手作業で、浸して柔らかくするための水は常温です。
楮塵取り
IMG_0097

柾版500枚発注すると、楮の塵取作業が数週間かかるそうです。
その下地作業の後、ようやく紙漉に移ります。

水の中の楮を桁で必要な厚みを掬い上げていきます。
紙漉

桁には透かし用の(芸)マークを設置
芸マーク透かし
生漉奉書紙 Watermark
完成すると写真のような透かし(Water mark)が。

このままでは和紙に絵具がきれいにつきません。
膠と明礬を混ぜた液体(ドーサ)を和紙の両面にひきます(絵具の滲み止め)。
ドーサ引き①
ドーサ引き
この液体の調合で絵具の付き方が変わります。いくら品質のいい和紙が漉けても、
ドーサが上手く引けてないと、絵具がつかないのです。
ドーサ引き後紙を干す
一日干して完成。
洗濯はさみ
ドーサ引きした和紙を止める洗濯ばさみが手に入らなくなったそう。
金具の洗濯ばさみの止め具合が丁度いいらしい。
いろんな道具・材料が手に入らなくなってきました。

どの工程が抜けても最終の摺作業までたどりつけない繊細な工程を経て
ようやく版元の元へ。木版摺用の和紙の完成です。



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復刻木版画 歌川広重「阿波鳴門の風波」

こんにちは。芸艸堂です。

現在復刻中の木版画の紹介です。

「阿波 鳴門の風波」復刻事業
アワガミファクトリー

アワガミファクトリー様では、歌川広重の浮世絵として知られている
「阿波 鳴門の風波」の復刻制作を行なっています。

阿波鳴門風波

この度の復刻では、徳島県出身であり、日本財界の重鎮として活躍した
日本化薬株式会社 元会長 原安三郎氏の浮世絵コレクションとして所有
されている当該作品の初摺り(最初の版木で彫られたもの)を、
中外産業株式会社様のご厚意により6月に版元、彫師、摺師と共に原画を
拝見させて頂き、その初摺り作品を原画として復刻作業を進めています。

阿波鳴門解説

6月に版元、彫師、摺師と共に原画を拝見し、その後、まずは彫師のもとで
版木制作が進みます。
8月下旬に板木は彫師から摺師のもとへ移り、校正摺りや版木の修正など細かい
作業を経て、10版26度摺を重ね、これより本摺に進もうとしています。
彫師佐藤①
図引紙に広重の筆致を崩さないように引き写し彫師佐藤②
彫師佐藤
平井摺解説
阿波鳴門摺

江戸の気鋭の浮世絵師であった広重の息吹を、京都の木版画版元である芸艸堂が
協力し、当代気鋭の彫師、摺師がこの復刻に実直に臨みました。

今回の事業を記念しまして、この制作にまつわる四方山話を、版元・彫師・摺師の
クロストーク、そして「阿波 鳴門の風波」の摺りのデモンストレーションを
アワガミ国際ミニプリント展にて10月8日に開催されました。

アワガミ国際ミニプリント展
日時:2023年10月7日(土)~11月12日(日) 9:00-17:00 月曜休館(祝日の場合は翌日休館)
会場:阿波和紙伝統産業会館、いんべアートスペース
共通入場料 一般300円 学生 200円 小中学生150円

"Wind Waves in Naruto, Awa" (aka: Awa Naruto no Kazanami) is one of the masterpieces from the print series: ʻSixty-odd Provinces Meisho Zueʼ created by Ukiyo-e artist, Hiroshige. It has recently been faithfully re-printed by master printers on Awagami washi paper. As a guide for making the reprint, the collaborators used an original print found in the collection of Tokushima native Yasusaburo Hara. The new woodblock re-print on Awagami washi utilizes the exact same printmaking methods as the original. As Ukiyo-e woodblock prints tend to deteriorate with each successive print run, craftsmen often re-carve the blocks for new prints, known as "after-prints.” “Wind Waves in Naruto, Awa” from Hara-sans collection is one of the earliest editions that still maintains the original character and visual intent of Hiroshige. We hope that you will enjoy this interesting Hiroshige reprint which vividly brings to life the lines and colors that Hiroshige had pursued during his lifetime.



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SSS Re\arise #1.5 EXTHIBITION KYOTO”にて芸艸堂コラボ版画制作工程

こんにちは、芸艸堂(うんそうどう)です。

株式会社 アプリボットのクリエイティブスタジオ「SSS by applibot
(トリプルエス バイ アプリボット)」が開催する、所属クリエイター
自らがプロデュースする展示会“SSS Re\arise #1.5 EXHIBITION KYOTO”にて、
京都市およびホテルアンテルーム京都の全面協力の元、京都伝統産業事業者との
コラボレーションによる新作の制作が実現しました。

SSS by applibot
Re\arise #1.5 EXHIBITION KYOTO 
ホテル アンテルーム 京都 〒150-8044 京都府京都市南区東九条明田町7番
入場料:無料 ※予約不要
2023年2月18日(土)~4月2日(日) 10:00-20:00

SSS 京都 のコピー

タイキ、米山舞、BUNBUNがそれぞれの事業者とのコラボレーション作品を展示
いたします。
芸艸堂はBUNBUNが浮世絵を含む木版技術を利用しつつ、現代のインクも交えて
制作した木版画のコラボレーション作品の制作を担当いたしました。



BUNBUN
イラストレーター・キャラクターデザイナー。京都府出身。
ライトノベルの挿絵イラストを中心に、アニメ、ゲームなどの
キャラクターデザインを手掛ける。
2004年からフリーランスイラストレーターとして活動を開始。
ライトノベルのイラストを100冊以上担当、画集4冊発刊。
原作イラスト・キャラクターデザイン原案として、「ソードアート・オンライン」
「結城友奈は勇者である」 / 「終末のイゼッタ」 / 「サクラクエスト」などの作品
を手掛ける。

今回の木版画制作は展覧会のためのオリジナル描き下ろし作品です。
木版画制作は絵師が原稿を描き、それを元に彫師が色ごとに版を彫わけ、
摺師がその版を使い原画の色使いを忠実に再現する昔ながらの分業制作です。

京都展版画縦_1206_FIX_完成イメージ のコピー

京都展版画縦_1206_境界線 線参考 のコピー

いただいた原稿+輪郭となるアウトライン(主線)のみの画像をいただき
図引き紙(ずびきし)にプリント。それを版木に貼り付け、彫刻の開始です。

彫師 北村
いかに無駄のない彫枚数で原画と同様の色表現ができるかは彫師の長年の
経験によります。彫は名人 北村昇一氏が手がけました。
図引き紙貼り込み・剥がし のコピー
線画のみ板に残るように図引き紙を刷毛で掃います。
主版彫作業 のコピー
瞳部分彫 のコピー
瞳部分など繊細な箇所は慎重に彫進めます。
主版 のコピー
主線の板が完成
主板から校合摺(墨1色の摺り)を作り、色分け部分をトレスしていきます。
それを各版木に貼り付け、色分け彫を始めます。
主版からの校合摺 のコピー
校合摺から色板用振り分け② のコピー
目の部分1 のコピー
瞳部分の色板

色ごとに彫り分けた版木は裏表を使い版木13枚25版になりました。
13枚25版 のコピー

完成した版木を用い、摺師が原画の色に忠実に摺っていきます。
顔・目などの細かい部分や陰影を再現するために摺師は何度も版を
使い分け摺重ねていきます。
そのような過酷な使用にも摺り耐え、紙の伸縮によるズレもでない強さがある
紙は越前生漉奉書紙を使用しています。

生漉奉書紙
この和紙は手漉き和紙古来の技法を受け継ぎ、木材パルプなどを使用しない
100%楮だけを使用した和紙です。

その和紙に摺るのは佐藤木版工房の中山氏
摺師 中山

原画を見ながら絵の具を調合し、主版を摺った後、薄い色から順に重ね摺していきます。
主版に絵の具載せ
主版に和紙を載せる
主版を摺る

①主線 のコピー

1ミリにもみたない瞳部分の版を使い寸分のズレなく摺り上げていきます。
②目・瞳 のコピー


今回の版画は原画に木版独自の技法を交えるというコンセプトの基、
ゴマ摺という摺技法を蛙・背景に原画とは違う表現方法で摺り上げました。
⑤蛙・背景ゴマ摺 のコピー


25版の版木を用い35回摺重ね完成した版画がこちらです。
⑩完成 のコピー


「Kawazugal」
紙寸:41㎝×27㎝
絵寸:36.7㎝×23.7㎝
用紙:越前生漉奉書紙
絵師:BUNBUN
彫師:北村昇一
摺師:中山誠人
芸艸堂版 25版35度摺




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再摺「綾錦」

こんにちは。芸艸堂(うんそうどう)です。

芸艸堂は大正時代に『綾錦』という本を手掛けました。

旧・西陣織物館では、当時、古近代の名物裂や参考品が陳列されており、
大正天皇御大典記念として内外古今の織染物刺繍の名品を高度な印刷技術
を用いて記録する事が企画され、木版摺で再現した全集です。

その装幀は、各巻ごとに誂えた西陣織の表装裂、組紐による綴じ紐など、
造本にこだわったものです。精巧鮮麗を極めたこの版画全集は
名人にしか摺る事ができませんでした。

当時京都の主な呉服商が必ずお持ちのこの本は、本そのものが
工芸品といって過言ではありません。

発行していた大正期でも当事の価格で全巻660円
(今日の物価で50~60万円)の豪華本でした。

第1巻 内外古代織染物刺繍類
第2巻 時代服装類
第3巻 室町時代舞楽装束、名物裂間道
第4巻 支那印度地方染織物刺繍類
第5巻 夏に因める織染物刺繍類
第6巻 古代能衣裳類
第7巻 古代刺繍類
第8巻 古代更紗類
第9巻 古代支那印度地方織物刺繍類
第10巻 古代織物打敷袈裟の類

大正5~14年にかけて発行された全10巻、各部200部発行。

綾錦第7巻表紙
第7巻表紙

知る人ぞ知る『綾錦』ですが、学術的な調査は今までされてきませんでした。
そこで、2020年 東京国立近代美術館(国立工芸館)の学芸員中尾優衣様により
公益財団法人ポーラ美術振興財団の助成を受け、掲載された染織品や模写した
図案家達の事など、『綾錦』に関する様々な調査が行われました。

当社は所蔵する『綾錦』の版木を使って現代の摺師が印刷を再現する調査協力
が始まりました。

再現する摺師は平井恭子氏(佐藤木版画工房)
師匠の佐藤景三氏がサポートし、再現する図版を第7巻の19の
《刺繍扇、梅花模様裂》としました。

まずは版木蔵で対象の版木を探します。
版木蔵縦
版木蔵の棚には、ぎっしり『綾錦』の版木が入っています。
版木探し
版木探し②
大正期から一度も再版してない版木の積年の埃を吸い込みながら、4人でほぼ
1日を費やして、捜索と整頓の作業を続けました。

版木を見つけた後、摺師は「版木」と「原稿の写真」「摺り見本の当社備付見本」
を見比べながら、経年劣化で飛んだ色の確認や布を再現するための摺り方の
工夫を、打ち合わせます。
板当たり

師匠は下準備として和紙にドーサを引きます。
和紙にそのまま絵の具を載せると滲んだり、和紙が版木に張り付くため
「明礬と膠とを混合した液」を「滲み止め」として和紙に引くのです。
この濃度が摺師によって違うので各人摺りやすい濃度を調合し、引いていきます。
ドウサ引き

摺師の技量プラス感覚が必要な“ぼかし”や“浮かし”により、馬連以外にタンポなど
を用い、絹地の風合いや刺繍糸の立体感を再現していきます。
6毛タンポで版木に絵具をつける①
毛タンポで版木に絵具をつける
14馬連でこする
馬連でこする
摺工程①
摺工程②
版木に刷毛で絵の具を載せる
版木にグラデーションになるよう絵の具を載せる。
摺工程 グラデーション

タンポ・布を使って金糸の再現。
タンポで金をひく②
タンポで金をひく
金粉完成

版木は7枚、裏表彫られ16版の板を使い32度様々な道具を使い
重ね摺りして完成しました。
完成 拡大図
完成拡大図②
完成

摺師の再現度は高いものでしたが、今回の再摺りは1点のみでした。
ほとんどのページが木版印刷だった『綾錦』を見返す度に、当時の
本造りのプロ達の技術の高さを再認識します。

これからも引き続き中尾先生のご研究に協力しつつ、
摺師達の技術の進化に繋げたいと思います。



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バックストリートボーイズ木版画 アメリカで販売

こんにちは、芸艸堂(うんそうどう)です。

浮世絵木版画 BACKSTREET BOYS 裏街路五人衆 

裏街道五人衆

2019年、結成25周年、6年ぶりの来日公演が控えるバックストリートボーイズの
浮世絵木版画制作を承りました。
その後、アメリカファンクラブでの販売がコロナ禍で延期、2022年
ツアー再開とともにようやくファンクラブサイト https://backstreetboys.com/
での販売が始まりました。

LIMITED OFFER  BSB UKIYO-E WOODBLOCK PRINT 
Released exclusively in Japan in 2019, the first-ever Backstreet Boys Ukiyo-e
is now available worldwide!
5人が画面上にサインを書いたAutographed版もございます!

EHI5ufnWkAAJgQW[1]
BSBサイン版2

構図は歌川国貞(三代豊国)「御あつらへ三色弁慶」を参考に
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京都の絵師深谷冬奇氏に依頼。
絵師

木版画制作は絵師が原稿を描き、それを元に彫師が色ごとに版を彫わけ、
摺師がその版を使い原画の色使いを忠実に再現する昔ながらの分業制作です。

ラフ案を何度も校正し、構図を決めていきます。
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完全原稿が上がる前に輪郭となる墨線のみを先に絵師に仕上げてもらい、
図引き紙(ずびきし)にプリント。それを版木に貼り付け、彫刻の開始です。
WEB用BSB原画
↑完成原稿

いかに無駄のない彫枚数で原画と同様の色表現ができるかは彫師の長年の経験
によります。彫は名人 北村氏が手がけました。
北村 彫り
版木④
版木③
版木②
版木①

色ごとに彫り分けた版木は裏表を使い12版になりました。
完成した版木を用い、摺師が原画の色に忠実に摺っていきます。
着物や顔・目などの細かい部分を再現するために摺師は何度も版を
使い分け摺重ねていきます。
そのような過酷な使用にも摺り耐え、紙の伸縮によるズレもでない強さがある
紙は越前生漉奉書紙を使用しています。

生漉奉書紙
この和紙は手漉き和紙古来の技法を受け継ぎ、木材パルプなどを使用しない
100%楮だけを使用した山口和夫氏によるものです。

その和紙に摺るのは佐藤木版工房の中山氏
摺 実演③

原画を見ながら絵の具を調合し、薄い色から順に重ね摺していきます。
中山 摺①
中山 摺②
中山 摺⑤

1ミリにもみたない瞳部分の版を使い寸分のズレなく摺り上げていきます。
ブルーの瞳の版木
顔 部分

12版の版木を用い40回摺重ね完成した版画がこちらです。
裏街道五人衆
BSB額装 のコピー
額装
販売サイトはこちらの ファンサイトから 
※全世界限定200枚
絵寸:縦27cm×横57cm
紙寸:縦30cm×横60cm
用紙:越前生漉奉書紙(山口和夫)
絵師:冬奇
彫師:北村昇一
摺師:中山誠人
芸艸堂版 12版40度摺


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ギャラリー
  • 「壁を飾るもの展」が鳥居株式会社にて開催されます。
  • 「すべてを描く萬よろず絵師 暁斎」展が中之島香雪美術館にて始まります。
  • 「体感型デジタルアート劇場 浮世絵 RE:BORN」展が角川武蔵野ミュージアムにて始まります。
  • 「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」展が東京国立博物館にて始まります。
  • 「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」展が東京国立博物館にて始まります。
  • 「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」展が東京国立博物館にて始まります。
  • 「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」展が東京国立博物館にて始まります。
  • 「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」展が東京国立博物館にて始まります。
  • 「大谷探検隊 吉川小一郎」龍谷ミュージアムにて木版摺実演、貝千種展示